トチローの地震と電磁波教室タイトル

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 写真提供:福岡市

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地上波テレビに及ぼす前兆電磁波の影響

2000/3/8 執筆着手
2000/4/24 V1.0 執筆終了
2002/6/16 V1.1 htmlタグを一部修正
2005/1/19 V1.2 htmlタグを一部修正
2009/11/8 V1.3 アナログテレビに関する記述を追加
2019/6/14 V2.0 デザインを全面変更

前置き

ここで対象とするTV放送は日本ではNTSC(National Television System Committeeの略。米国などと同じ) で行われているVHF、UHFの周波数を使用し、地上の放送局から行われている放送である。ラジオと大きく 異なる点は、誰にでもわかることとして、映像を送信していることである。専門的になるが、ラジオより も同一情報を広い周波数帯域を同時に使って送信されていることから、テレビ放送のどの情報要素(単に 画像に縞が出る、といった単純なことでなく、色の変化や、画像がどちらにぶれるか等)に如何なる影響 が出ているかを調べることによって、ある程度発生源の性質を推測することができる。
なお、AM/FMラジオでの検討項目と重複する点については、その都度リンクして記述を省略している箇所 がある。
追記:以下の記述は現行のアナログテレビ放送で確認できることであり、2011年7月24日に 移行されたデジタルテレビ放送(通称:地デジ)には適用できない。 デジタルテレビ放送においては全てのノイズがエラーレートの悪化としての影響になるため、音声・画像 など個別の視聴できる現象を通して観察することはできない。デジタルテレビへの影響については執筆中。

映像用電波と音声用電波の違い

TV放送の電波は大きく分けて、映像信号・音声信号・制御信号・それ以外の信号(例えば字幕放送の信号 など)から成っている。これらの信号伝送の方法は大きく異なっており、前兆現象の現れ方の違いの原因 にもなる。まず、映像信号は一種の振幅変調(AM)方式である。振幅変調については AMラジオに及ぼす前兆電磁波の影響 2.振幅変調の章を参照 されたい。音声信号は周波数変調(FM)方式である。周波数変調については FMラジオに及ぼす前兆電磁波の影響 2.周波数変調の章を参照さ れたい。制御信号は複雑な変調が施されているので詳細な説明は避けるが、簡単に言えば振幅変調である 。それ以外の信号のうち、字幕放送については1種の周波数変調で送られている。

映像への影響

映像信号は振幅変調であるために、音声信号よりも早く影響が現れる場合が多いと考えられている。現実 に神戸・淡路大震災の前夜に縞や、色が変動しているビデオ画像が記録されている。この貴重な資料では 映像を送る信号のうち、色信号と呼ばれる画面に出す色彩を制御する信号に影響が出ていたことが後の実 験で確認されている。(参考文献:  より)
FIG_TVJ0101 色信号はカラーバースト信号(色副搬送波)という3.5795454545 ・・・・MHzの正確な信号が放送局から送られて、この信号をテレビ受像器で正確な周波数に復元する (これを同期をとるという)ことで、送出された色と同じ色を再現する 仕組みになっている。NHKの各県のキー局及び一部の民放キー局は、国家標準の周波数に準じた精度で このカラーバースト信号の周波数精度を維持(これをトレーサビリティ という)している。この過程を図示したのがfig.1である。言い換えれば、各家庭の テレビ内部には国家標準に準じた、正確な周波数が存在しているということになる。現実に、この信号を 取り出して周波数カウンタ等の校正に使えるような信号に加工するキットが秋葉原で安価で販売されてい る。(秋月電子)但し、NHK・一部の民放でも中継(特にマラソン、ゴルフ等の屋外スポーツの中継)時に はどうも、キー局で使用する正確な周波数標準ではなく、中継車に積載された副標準信号が使われること があるようで、スタジオから中継現場に切り替わった瞬間に周波数が僅かに変動する現象が観測されるこ とがある。(余談になるが東京国技館で行われる大相撲の中継だけは、スタジオ 放送時と同じ正確な周波数が使われているという。力士の肌のアップ映像ばかりの番組で、家庭で色ズレ でも起こされてはクレームの元になるというのが理由らしい。

このように放送局側ではカラーテレビ放送における発色には厳重な管理が行われているが、受信側で同じ ような配慮をしている場合は希であろう。概ね、”自動調整ポジション”とかでお茶を濁している場合が 多いはずである。しかし、実はこのような微妙な配慮が必要ということは、自然界の微妙な影響を受けや すいことも意味する。色についての学問的な説明を行っていては1冊の本になってしまうほどの分量があ るし、第一、筆者は専門的な知識は持ち合わせていない。従って、ここでは色の絶対評価(主に反射する 光の波長で評価するらしい?)では無く、今まで写っていた色がどう変化したかによって色信号への影響 を探りたい。

次に画面が縦振れ・横振れすることなく、静止した画像は静止して、動画はきちんと追従して動く仕組み を司る同期信号について触れたい。同期信号はその名の如く送出側の 画像と受信側の画像が同じになるよう送られてくる制御信号である。この信号も送出時には極めて精度の 高い周波数の信号が使われるが、受信側でこれに同期できないときは画面が上下・左右に振れることになる。 昔のテレビはこの同期回路(昔は本当の意味で同期していたとはいえない)に相当する回路が極めてお粗末 であったために、ある年代以上の方は、テレビのスイッチを入れる毎に垂直同期・ 水平同期あるいはその英語表記のつまみを回して、絵がきちんと止まって見えるよう調節した 経験をお持ちかと思う。当時は時間が経つにつれて画面が上にずれたりしていたが、現在は理想状態ならば、 調整が必要なほどずれることはほとんどあり得ないと言っても良いだろう。それがずれるということは、何らかの 外的影響を受けていると判断するのが妥当である。しかし、必ずしも地震の前兆とは 限らない。

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色信号への影響

FIG_TVJ0102 全ての色が3原色と呼ばれる色の組み合わせ、正確には混合(加色)によって表現される。カラーテレビ も、この3原色を加色する割合によって表現される色が決まる。HTMLをエディタでタグ付きで記述する( 俗にベタ書きという?)方は<FONT COLOR=#******>というタグ(半角で書くとHTML のタグと解釈されるので全角で記述している)の******が3原色のR(Red)G(Green)B(Blue)それぞれ の割合であることは良くご存じと思う。テレビの原理も同じである。fig.2のように一般にはブラウン管 内部に3原色それぞれ用に電子ビーム銃があり、それがブラウン管の裏に塗られた蛍光物質に衝突して相 当の可視光線になり人間の目にそれと見える仕組みである。

fig.4はカラーテレビ放送の信号を模式的に示した図である。説明している信号が、信号のどの部分であ るかを常に把握しながら説明を読んでいただきたい。
放送では色を表現するために輝度信号(画面の明るさの情報)と 色差信号(3原色信号と輝度信号の差)を使用する。まず、輝度信号は 一般にはY信号と呼ばれ、3原色の明るさの和で現される。 RGB信号とY信号には次のような関係がある。
Y = 0.30R + 0.59G + 0.11B
すぐにお気づきになると思うが、3原色が均等に加えられていない。これは人間の眼が光の波長に対して の感度が異なることがその理由である。この割合を使うと白黒テレビでもそれなりの色感(濃淡)で カラー映像を見ることができる。つまり、これ以外の適当な混合比を用いることで様々な色を表現してい る。
映像信号は振幅変調であることは先に述べたが、実は極性を反転した波形 (簡単に言えば白を現hす信号が黒に、黒を現す信号が白を現す信号になっている)が放送局から送られて来ている。つまり、 画面の黒い箇所を伝える時に振幅が最大になっている。これは少しでも外来雑音の影響による色の変動 をわかりにくくする苦肉の策である。従って、画面に黒い縞が入る時、輝度信号が送られている帯域 に放送局からではない外来信号が到来していることを意味する。
色信号はfig.3のように側波帯の上側(これを上側波帯という)の部分にあり、電波の搬送波から右側に 3.5795454・・・MHz離れた所に先に述べたカラーバースト信号があり、この信号に特殊な変調で色差信号 が加えられている。色が付かなくなったり、色ズレが起きる場合にはこのカラーバースト信号が伝送されている帯域に放送局からではない外来信号が到来していることを意味する。

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同期信号への影響

FIG_TVJ0104

NTSC方式の地上波テレビ放送は1枚の画面を525本に横分割して送られる。fig.5に画像の分割方法を示す。 この分割する信号を走査信号という。走査は画面の水平方向は左から右に向かって、垂直方向は 上から下に走査が行われて分割される。正確には、狭い帯域で画像を伝送するためにインターレース方肢式 (飛び越し走査)といって、最初は奇数番号の走査が行われ(これに よって生成される不完全な画像信号を奇数フィールドという)、次に偶数番号の走査(偶数フィールド)が 行われる。この不完全な2つの画像が合成されて始めて画像として完成する。この完成した画像をフレームと いう。フィールドh榔秒間に60枚伝送されるが、奇数フィールドと偶数フィールドが揃って始めて絵として完成 するために実際の画像(フレーム)の伝送速度は1秒間に30枚となる。フィールドの伝送速度が1秒間に60枚であるこ とから、フィールド周波数又は垂直走査周波数が60Hzであるという。この数字が決まると、NTSCの走査線が 25本であることから、画面を横に走査する周波数、水平走査周波数も決まる。1回のフィールド伝送h画面の半分、 つまり525本の走査線で分けられた画面の1/2を送ることから、その時に送られる走査線数も 1/2の262.5本になる。従って、水平走査周波数は、
262.5(フィールドの走査線数)×60(垂直走査周波数)=15750Hz(水平走査周波数)が求まる。

FIG_TVJ0105

実際の周波数は最も正確なカラーバースト信号3.57954545MHzから作られ、それぞれ15734.264Hz,59.94Hz である。このことからカラーバースト信号が乱されると画面の水平・垂直の同期に影響を与えることもお わかりいただけると思う。実際の製品では様々な補正回路が付加されており、昔のように頻繁に画面が影 響を受けることはないはずであるが、それが起きるということは、周波数 関係を乱している別の要因を考慮する必要が出てくる。
従って、色への影響が少なく、画面だけズレることは、伝搬の途中で他の電磁波の影響を受けた可能性 よりもテレビ内部に直接飛び込んでいる可能性が高いといえるのではないだろうか。
fig.4を見ていただければおわかりになると思うがテレビ信号は他の放送と異なり複数の情報が様々な変 調方式で多重化されている。そのために伝搬途中で音だけ、色だけ、画面だけに影響が及ぶ可能性は 低いのではないだろうか。
テレビの中間周波数は約58MHzである。この段階以降で、それぞれの情報成分に分離される。ここで外か らの電磁波が侵入するとそれぞれの要素に独立して影響が現れることは十分にあり得る。但し影響を与 える周波数はテレビ放送の周波数よりも大幅に低い周波数である。一般に電磁波は 周波数が高くなるにつれて真っ直ぐ進む特性が強くなる。従って周波数が低ければ電磁波が発生している地点からよ り広い地域に影響が及ぶ可能性が増える。影響を与えている電磁波の周波数を特定することは、前兆で あるかどうか、またその前兆がどのような原因によるものかを推測するための貴重な情報になることを覚えておいてほしい。

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音声への影響

音声信号はFMラジオと同じ周波数変調方式で送られている。そのため、映像よりも前兆と考えられる バースト電磁波の影響を画像よりも受けにくく、音声に影響が出る場合は、かなり強い電磁波が妨害を 与えていると考えるべきであろう。また、テレビ放送の音声は映像の影響を受けずに(普通のFM受信機で 単独で受信することができる。

1、2,3chの音声周波数はそれぞれ95.75、101.75、107.75MH である。国内のFM放送の上限周波数は90MHzだが、海外の(音声)FM放送の周波数は108MHzである。最近 のFM受信機は輸出仕様を考えて受信上限周波数が108MHzの機種が多く出回っており、1~3chのテレビ音 声を受信することができる。音声FM放送よりも周波数が高いことを除けば、テレビ音声への影響は概ねFM放送と差異が無いために、 FMラジオに及ぼす前兆電磁波の影響を参照されたい。

現在テレビ放送はデジタル化されており、FMラジオで音声を聴くことはできません。

ビデオのみに出る影響の可能性

ビデオはテレビ放送の電波をそのまま記録している印象が強いが、実は伝送されてくる信号に様々な加工を 施した上で記録されており、ビデオのみで使用される回路要素もたくさんある。したがって、テレビ を生映像で見ている間にの影響を受けていないように見えても、録画した映像には影響が出る場合が 考えられる。ここではVHS方式による録画の仕組みについて触れ、

FIG_TVJ0106

その信号処理のどの段階で外来電磁波のどのような影響を受ける可能性がある かについて記述する。 fig.6がVHS用ビデオテープの概略図面である。VHS方式では12.65mm幅の磁気テープを使用し、上の方に 音声トラック、下の方にコントロール信号トラックがある。ビデオ信号は少しでも記録面積を稼ぐため に、オーディオテープのようにテープの長手方向に素直に真っ直ぐ記録されるのではなく、ぶつ切りに されて斜めに記録されている。その記録幅はテープに対して垂直方向で測定すると58μmになるが、斜めに 記録されている有効な記録幅は10.07mmであり、fig.6のように記録された信号を取り出す仕組みを ヘリカルスキャン方式と呼び、少しでも記録に使えるテープ幅を増やす工夫の一つである。このように して画像をテープに記録するが、VHS Hi-Fiビデオの場合、記録されている信号はビデオ信号そのものと FM変調された音声信号であり、その周波数はビデオでは数MHzであり、音声では数10KHzである。 つまり旧アナログテレビでは数100MHzで伝送されてきた信号をビデオでは必要最低限の周波数で記録している。このよう な信号を元々の信号という意味でベースバンド信号という。見方を変えれば外界にベースバンド 信号に近い妨害信号が存在すれば、テレビで見ていて気付かなくとも、ビデオに録画して気付く場合があり得ることを示しているといえる。 最近、急速に普及しているデジタルビデオは全く異なる信号処理を行っており、その方式も難解であるため、ここでは詳しくは触れない。

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周波数に因る他の放送との影響の差

テレビの周波数はAM,FMラジオの周波数よりもかなり高い周波数で行われている。つまりそれだけ電波の 波長が短く、電波の直進性が強いことを意味する。また、画像をテレビで再現する場合に必要な電界強 度(電波の強さ)はラジオから目的の音声が聞き取れる電界強度に比較して何百倍も高いレベルである。 従って、テレビ映像・音声に何らかの影響を認めた場合、次のようなステップで観測を試みて欲しい。

(旧アナログテレビの)映像に影響が認められる場合

(1)映像信号は振幅変調であり、ノイズから受ける影響度はAMラジオと類似点が多い。そこでまず、外来 の人工ノイズについてチェックする。

(2)1~3チャンネル、4~12チャンネル、13~62チャンネルで受像可能な放送への影響度を比較する。こ の順序で周波数が高くなり、より直進性が高い電波を使っている。特に日本では1~3チャンネルと 4チャンネル以上では周波数が大きく離れており、人工ノイズが原因で無い場合には影響度に差がある 場合が多いと考えられる。より高い周波数で影響が出ている場合、影響の原因は受像地点と放送局を 結ぶ直線上でより近い地点と推定される。

(3)以上の何れにも該当する原因が無い場合、そのテレビ画像への影響は、 地震の前兆かもしれない。画像伝送のためにAMラジオ、FMラジオよりも遙かに強い電波を必 要とするテレビ画像に影響が出ているとき、その発生地点は受像地点とテレビ放送局を結ぶ直線上か、 その近くであり、地理的な影響も大いにあるが、概ね100km以内である可能性がある。

(旧アナログテレビの)音声に影響が認められる場合

音声信号はFMラジオと同じFM変調で伝送されており、FMラジオへの 人工ノイズについて考慮する点を参考にできる。映像信号よりも外来ノイズの影響を受けにくい テレビの音声信号に影響が出ている場合、画像の場合よりも深刻な地震の前兆の可能性がある。

(旧アナログテレビの)ビデオ記録のみに影響が認められる場合

先に記述したが、ビデオ内部では様々な周波数による処理が行われている。しかし、その大部分はテレビ 放送よりも低い周波数である。しかし、ビデオ録画ヘッドに使用されているアンプの感度はかなり高く、 それだけ外来の影響も受けやすい。人工ノイズをチェックすると 同時にAM・FMラジオ、テレビの各チャンネルの映像・音声への影響を注意してチェックする必要がある。 総じて、ビデオのみに影響が現れる場合は、内部の周波数構成や機器の現状を考えると、放送に影響が出 ている場合よりも前兆と考えられる可能性の程度は低いであろう。現実に、何らの外来の影響が無くと も、画像・音声がノイジィなビデオ機器が市場に出回っているのが現実だからである。しかし、油断は禁物である。

まとめ

ラジオ放送と異なり、TV放送に入るノイズについては、神戸・淡路大震災の前夜に顕著なビデオ信号へ の影響が正確な時刻と共に記録されており、一部で24時間体制の観測が行われている。しかし、データ の蓄積はまだまだ少ない。日頃からのちょっとした心がけが大きな地震の前兆把握に役立つ可能性があ ることをここでも強調しておきたい。

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