トチローの地震と電磁波教室タイトル

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 写真提供:福岡市

SINCE 2000/2/22 counter

AMラジオに及ぼす前兆電磁波の影響

2000/2/22    執筆着手
2000/2/29 V1.0 執筆終了
2000/4/24 V1.1 考慮すべき人工ノイズ源を追加
2002/6/16 V1.2 htmlタグを一部修正
2002/8/18 V1.3 AMラジオを使ったノイズ受信実験を追加
2005/1/9 V1.4 一部修正
2019/6/12 V2.0 デザイン全面変更及び内容を一部修正

前置き

ここで触れるAMラジオは中波帯のラジオ放送である。この放送は振幅変調という方式で情報が伝えられ る。そこでまず振幅変調について述べる。

振幅変調

FIG_AMJ0101

音声やデータを遠くまで伝達させるためにはそのままでは不可能である。その為に、遠くまで伝搬( 電波が遠くまで伝わること)することが可能な電波に音声やデータを乗せる加工が行われる。これを 変調という。

変調には様々な種類があるが一般向けの放送に使用されているのは主に振幅変調、周波数変調、位相 変調である。後者2種類については別項で触れる。振幅変調は電波の振幅成分に情報を乗せる変調( 加工)の方法である。(FIG.1参照)この方式は比較的簡単な回路で実現できるために、放送として 最初に実用化され、未だに実用的に使用されている。

復調

FIG_AMJ0102

変調を受けた電波はアンテナから空中に放射される。これを輻射という。受信のためにはアンテナで その電波を集める作業が必要になる。これが受信である。受信された電波から元の音声やデータを取 り出す作業を復調と呼ぶ。復調も簡単な回路でも可能なため、振幅変調方式の放送が広く使われている 一因になっている。(FIG.2参照)

伝搬(情報の伝達)

FIG_AMJ0103

次のような順番で情報が伝達される。

音声・データ -> 変調 -> 変調された電波 -> アンテナ -> 空間 -> アンテナ  -> 受信

上の行を図示したのがFIG.3である。ここで空間で外来電磁波の影響が加えられる。これがラジオに 及ぼす影響である。地震の前兆として捉えられる電磁波は一般に広いスペクトルを持つ。言い換えれ ば色々な周波数成分から成っている。また、そのエネルギーのかなりの部分はインパルスの形で空間 に放射されている。この電磁波発生原因として、地層中の石英結晶に激しいショックが加えれれるこ とで、ピエゾ電気現象によりパルス状の電磁波エネルギーが発生するという説が有力であり、筆者も この説を支持する。

この時の電磁波エネルギーは単発あるいは連続するインパルスであり、 極めて高い電圧が発生している可能性もある。また、波形が鋭いパルス状であることから、周波数的には極めて広範な スペクトルを示す。地表にどの程度現れるかは、偏に地層の電磁波伝搬特性、電磁波発生地点の深度 に依る。

FIG_AMJ0104

AMラジオが振幅成分に情報が含まれていることについては既に述べた。ここに外乱のインパルスが加 わると、この情報が乱される、即ちノイズとして受信できる。FIG.1の右側に示されている変 調された電波にノイズがFIG.4の如く加わる訳である。これを復調すれば情報の一部が失われること は容易に理解できるであろう。

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AMラジオへのノイズを聞いたら

確認すべき項目

(1)雷雲が発生していないか。AMラジオの帯域は雷雲が発するエネルギーが 大きな帯域でもある。また、雷雲の発生高度が高く、大規模の場合には視野外に雷雲が存在する場合でも ラジオにノイズが入る場合がある。雷ノイズの場合、”バリッ”という単発のノイズ が繰り返されることが多い。 また、ラジオの受信周波数全範囲で同じ程度に入る場合が多い。殆どのAMラジオではバーアンテナという 内蔵タイプのアンテナが使用されているが、雷ノイズは広域または上空の高いところで発生するため にラジオの向きを変えてもノイズの大きさが変わることは少ない。

(2)近くに高圧電線がないか。高圧電線の鉄塔の近くではコロナ放電に よるノイズが発生する。特に雨が降っている時、湿度が高い時に発生しやすい。このノイズは ”ジー”という連続したノイズになることが多い。鉄塔が見える所では、 電線を支えている碍子の付近で放電による発光が見られることもある。雷ノイズよりもノイズが放出される 地域が限定されるため、高圧電線に沿って移動する場合を除いては、電線から離れるに従って急激に ノイズは減衰する。

(3)新幹線の線路の近くではないか。特に初期の新幹線に使われている 0系(既に営業運転では使われていない)と呼ばれる、丸い頭の古い車両では通過の際に著しいノイズを周辺 にばらまく。夜間であれば、パンタグラフと送電線の間に激しい火花を見ることができる。新しい車両になるに従っ て、ノイズは格段に減る。特に500,700系”のぞみ”では相当改善が進んでいる。新幹線ノイズは当然 であるが、列車走行時にしか発生しない。また、ノイズは”ジャージャー”という 強弱の多い連続hしたノイズになることが多い。

(4)近くの電柱上に変圧トランスがないか。最近は徐々に数が減っている そうだが、いまだにかなりの数が稼働中である。特に円柱形のいかにも古い外観のタイプでは、内部よりノイズを発生する ことがある。特に夏にエアコンの使用で付近の電気使用量が多い場合にノイズも増える傾向にある。 電柱上のトランスからのノイズは一度出始めると弱くなることがあってもなかなか消えない。音は ”ジー”又は”ジャー”と連続することが多い。付近で大量の電気を パルス状で消費するような(たとえば電気溶接機)場合はその動作に従ってノイズの レベルも変動する。電柱とそこから伸びている電線から離れれば、急激にノイズは減衰する。

(5)近所で電気温水器が使われていないか。古いタイプの電気温水器は お湯の温度を一定に保つ為に内部にスイッチがある。新しいタイプではインバータ制御の製品もあるが メンテナンスが行われていない古いタイプでは、インバーターの動作状態やスイッチがON/OFFする度に ノイズが発生する。インバーター制御では新しい電車で加速時に車内でも聞こえるような ヒィ~ンという音の高さが変化する音や、”バリッ” という単発のノイズや音になる。数軒隣くらいで使われていなければ、この ノイズである可能性は低くなる。

(6)近くで電気溶接機が使われていないか。先程も少し触れたが、 電気溶接機は正に不良電波発生機と呼んでも過言ではない。別に 溶接機が悪い訳ではない。火花はある意味で電波そのものだからである。(余談だが、 世界初の電波を使った通信機は火花を発生させることで、電波も同時に発生させ、これを断続して符号化して 通信に利用した。B電波と呼ばれる。当然だが現代ではこの種の電波を通信に使用することは禁止されている) ガードレール、歩道橋、線路、フェンス、などの補修工事が近くで行われていないか。このノイズは火花の 発生に従って”ジャー、ガー”と激しく笈強度・音が変動する。 当然だが溶接機が使われている間だけノイズは発生し、溶接機から離れれば急激にノイズは減衰する。

(7)霧は出ていないか。冬であれば、雪又はみぞれが降っていないか。 水蒸気又は小さな水滴が帯電(電気を帯びる)することがあり、これが空気中に漂ってノイズ源となる 可能性がある。雨粒程度の大きさであれば、一時的に帯電しても直ちに空気中に放電したり、他の電荷と 中和して電荷が無くなることも多い。しかし、霧・雪の場合、長時間帯電したままの状態もあり得る。 また、みぞれが降っていたり、地上では雨でも上空では雪や霰の状態で水が存在しているような天候の場合も ノイズ源となる可能性がある。これらは、電磁波を減衰させたり、その電荷の増減によって電磁波の振幅に 影響を与えることもある。そのため、AMラジオでは、昼間でも電波の強さが変わったり、”じー”、 ”しー”という連続性のノイズが受信される。

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前兆の可能性が考えられる場合のチェック項目

ここまでチェックしても該当する人工ノイズ源がないならば、地震の前兆電磁波 かもしれない。次の点について可能な限りチェックする。

(i)時刻

発生時刻を117や電波時計を使用して、できるだけ秒の単位まで正確に記録する。カーナビ付属の時計も それらに準じて正確である。”秒”の単位まで必要なのは、雷雲の接近を”雷光”と”雷鳴”の到達時間の 差で計算することと同じ理屈である。電磁波は真空中では光速で伝わり、空気中・地中においても、 ある割合で遅くはなるが、一般的な尺度では大変に速い速度で伝搬するために、電磁波発生源の特定に は”秒”の単位までが必要だからである。

(ii)発生の頻度・聞こえ方

FIG_AMJ0105

どの程度継続しているか。断続したパルス状か。発生に一定の周期はあるか。これらも”秒”の単位まで 記録したい。

(iii)ノイズが来る方向

AMラジオのバーアンテナも8の字指向性を持ち、アンテナの長手方向の前後に指向性がある。(FIG.5 参照)一方向から来るか。ある方向の範囲から来るか。時間によって到来方向が変化する場合もある。

(iv)ノイズのレベル

ラジオにチューニングメーターがついていれば、どの位まで振れるか。針式(機械式)のメーターであ れば、ノイズのピーク値を示すことは不可能だが、特に車載のチューナーでピークホールド機能付き のメーター(発光ダイオードや蛍光放電管の場合が多い)であれば、ピーク値がわかる。メーターが無 い場合は音の大きさでも良い。通常の放送を聞きながら、ボリュームを操作して、ノイズと同じ音量に なる位置を求めて(これを置換法という)その位置を記録する方法もある。

(v)ノイズ音の録音

可能ならばノイズ音を録音しておきたい。貴重なデータになる可能性がある。

(vi)ノイズ発生のタイミング

詳しいことはまだわかっていない。今までの観測データよりAMラジオの帯域に入るノイズは地震発生 数日~数時間前に発生することが多いと考えられている。このタイミングについても、現在の公の観測 網ではほとんど観測対象になっておらず、不特定多数の民間によるデータの積み重ねが重要な意味を持 つことも十分にあり得る。

タイミングのみならず、前兆ノイズについては、本稿だけでなく、FMラジオ、TV、その他の電波使用機 器との観測を同時に行うことによってさらに観測精度を上げることが期待できる。逆に言えば、現在そ の程度しかデータが無いということである。

AMラジオを用いたノイズ記録実験

継続してノイズを記録する為にはPCとサウンドカードを使う方法が良いだろう。長時間動作を考えると MS-Windowsではリソース浪費によるハングアップの可能性があり、お勧めしない。どうしても同社のOSを 使いたいのであればWindows10しか選択肢は無いが必要なリソースが多すぎる。安定動作を望む のであればLinux系OSを推奨する。

受信機周りの留意点

(1)アンテナ

AMラジオのアンテナには指向性があり、更に近くに金属があると感度が低下す る。金属が大きいとその影響も大きい。鉄筋コンクリートの建物であれば、ラジオ本体を建物からで きるだけ離して設置するか、(改造が必要であるが)内蔵アンテナを取り外して屋外にアンテナを 設置すべきである。VLF帯観測用のアンテナもAMラジオと同じフェライトコアを使ったアンテナであるが、 塩ビパイプの中に仕込んで建物から約1m離して設置している。 屋内であれば建物の影響の他にインバータ式蛍光灯や他ならぬPC本体の影響も受けやすくなる。

外部アンテナ端子が付いていないラジオの場合、既存のバーアンテナに20~30回ほど0.15~0.3mmφの ポリウレタン線を巻き足す。ポリウレタン線が購入できない場合、壊れたラジオのバーアンテナの巻き 線や壊れたスピーカーの巻き線を再利用する手もある。一端は電池のマイナス端子又はIFトランスの シールドケースに半田付けし、もう一方を外部アンテナに接続する端子として利用する。簡便な方法 だが、巻き足す回数が多いほどダイヤルの表示周波数と実際の受信周波数のズレが大きくなるという 副作用がある。

(2)電源

連続受信する訳だから、電池式では電池が無くなれば記録できない。しかし、外部に設置している ラジオまでAC100Vを引っ張るのは安全ではない。従って、 ACアダプタが使用できるタイプのラジオをお勧めする。これで DCを引っ張れば遙かに安全性は高い。また防水にも十分注意したい。安直な解決手段は防水タイプの ラジオを使うことであるが、結構高価である。耐候性に優れた園芸用(植木鉢の花卉類を冬場に保護す る目的でDIY店で売られている厚手のビニル製)の袋などに入れてしまうのが良いだろう。

(3)PCとの接続方法

ラジオのスピーカーを鳴らす必要は無い。イヤホン端子にジャックを差し込み、PCのサウンドカード Line-in端子まで接続できるようにする。これも大きめの電器店に行けば長さが5mや10mといった長ーい イヤホンが売っているのでこれを利用しよう。100円ショップでも偶に見かけるので要チェックだ。

ラジオからの信号線はテレビ・エアコン・冷蔵庫などのノイズ源となりそうな製品からできるだけ離して 引き回しを行う。入手可能であればオーディオ用シールド線を使うことも気休め程度ではあるが効果が 無いこともない。

ビニル線について一般的に言えることだが、ビニル被覆は水・酸素を通す。?と思う方は外傷が付いて いないビニル線を屋外に1年ほど放置してその後、中の導線を観察して見られると良い。新品では銅色 だった導線がおそらくは酸化して真っ黒になっているはずだ。こうなると電気を通しているには違いない が(高周波的にはもはや廃物)、断線するのは時間の問題である。大気汚染、特に光化学スモッグが発生 する地域にお住まいの方は、屋外撒水用ビニルチューブの中に線を通すなど、できるだけ信号線が 外気と触れないように工夫してほしい。

(4)あくまで安価を望む方に

それでも100円AMラジオに拘る方には止めはしない。但し、選択性能が甘いので地元の他局の混信を受け やすいこと、感度の調整が不十分な製品が多いこと、高温になると性能が劣化する製品が多いことを 認識していただきたい。


PC周りの留意点

私はMS社が嫌いである。金金金秘密秘密秘密でクライアントを縛り上げる戦略が特に嫌いである。 仕事でMS社のアプリケーションが無いと読み書きできないデータがあるので仕方なく使っている。 自宅でもそうである。しかし、昨今ようやくデスクトップ環境が整い、特にPCとネットワークが密接に 関係しなければPCのメリットが活かせないようになり状況が変わってきた。オープンソースだから すぐにセキュリティホールを発見されて危険というのはMS社の詭弁である。MS社だけが握るコードを 破られてセキュリティホールを突かれてしまい、例のごとく対策が遅延しまくることの方がはるかに 危険である、と考えている筆者の思想を念頭に置いて以下の文章を読んでいただきたい。

Linuxであれば何でもという訳でもない。赤帽はミニMSのような気がする。ぶどう、過給器も同じよう だ。商用でもMade in Germanyの製品には好感を持っている。使ったことは無いが。という訳で、私が 使うのはDebian GNU/Linuxである。それ以外の ディストリビューションでの動作は一切確認していないのでご了承願いたい。

●それでもMS-Windowsを使うという方へ

●敷居は高いが安定なLinuxを使う

まとめ

何度か触れたが、放送に入るノイズはほとんどの学者が相手にしていないが、今までの民間による データ蓄積から前兆把握に大いに役立つ可能性を秘めている。できるだけ多数の読者各位の観測 参加を期待する。お金はほとんどかからない。日頃からのちょっとした心がけが大きな地震の 前兆把握に役立つ可能性があることを強調しておきたい。

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